さてさて、わしのことを憶えている人はいるかな……?
わしは、キッズルームの木琴じゃ。
正式な名前は、「小さな森の合唱団 琉球版」というらしい。ここのスタッフが調べてくれて、分かったのじゃよ。。それまでは「木琴さん」とか「楽器さん」とか呼ばれておったから、そっちのほうがわし的にはしっくりくるがな……。
まぁ、とにかく「小さな森の合唱団 琉球版」なのじゃよ。。
実は、今日、およそ一か月ぶりに、この江古田の杜のキッズルームに戻ってきたのじゃ。
え?
どこに行ってたのかって?
そりゃああんた、察しのいい人は分かるじゃろう。心当たりのある方もおるに違いない。。
わしはここで 1、2 を争う人気者でな、、こどもたちの間では汽車ポッポかわしか、というくらいでのう。。おかあさんやおとうさんにもたいそう人気があった。みんな、困るとわしのところに相談にくるのじゃ。「こどもを静かにさせるにはどうしたらいいですか?」とな。。
そこで、わしはどうするかといえば、ただ黙って背中を差し出すのじゃ。どうぞ叩いてくれ、という具合にな。
そこで、みんなバチを持ってわしの背中を順番に叩いていく。
すると、どんなにでたらめに叩いても、見事なメロディができるのじゃよ。まるで琉球の魔法のようにな。
だから楽しくて、みんなどんどん叩く。
わしはただ黙り、背中から出る音にひたすら身を任せる。
ただな、そんな背中も、いつまでも耐えられるわけではないのじゃよ、残念ながら。
優しく叩いてくれればいつまでもメロディを楽しめるが、力任せにがんがんやられてはな、、、背中を支えるくいが取れて、戻らなくなるのにそう時間はかからんかった、、それで、おもちゃの病院にちょいと世話になっていたというわけじゃ。
分かったかな? おもちゃでずっと遊びたかったら、優しくせにゃな。。
それで、だ。
一か月ぶりに戻ってきた江古田の杜は、やっぱり前とは少し違うな。
絵本ライブラリーには大きな本棚ができておった。
今日は「こんなふうに家が作れたら楽しそうだね」と言ってるおかあさんがいたぞ。
おやまあ、何だね? これは。壁がたいそう賑やかになったわい。。
鬼は前のまんまだな。。カウンターの中に入ろうとする子を成敗してくれるのじゃ。
そして。。
テラスで寂しそうに佇んでいるのは、もみの木じゃ。一か月前はクリスマス何とかというて、、ピカピカして皆の注目を浴びておったがな、、ちやほやされてな。。今はこんなになってしもうたのか……。
木も生き物だから、またピカピカの装飾がつくまで、みんなかわいがってあげるのじゃよ。。水をやるのも忘れずにな。
というわけで、またここに戻ってきたが、みんなわしのことを憶えていてくれるか心配じゃよ。。みんなすぐ新しいおもちゃに飛びつくからな……。
もし少しでも気にかけている人がいたら、「木琴さん」「楽器さん」と呼んでみておくれ。
そのときには、また黙って、背中を差し出してやろうじゃないか……。
こんどは、優しく、叩いておくれ。。